岐阜県白川町×白川町商工会 デジタル地域通貨「しらか」導入事例:人口減少と高齢化に挑む、地域経済活性化の鍵
SHIAGEL
岐阜県白川町
深刻化する人口減少・高齢化と地域経済の課題
岐阜県の東部に位置する白川町は、美しい自然に囲まれた魅力あふれる町です。しかし人口は減少の一途をたどり、高齢化という深刻な状況にも直面し、地域社会の維持や地域経済の疲弊が懸念されています。人口減少は購買活動の低下や経済規模の縮小を招き、高齢化率の上昇は生産人口の減少に加え、介護福祉医療費の増加や税収の減少といった課題に直面しています。
地域経済活性化の新たな一手:デジタル地域通貨「しらか」
こうした喫緊の課題に対処するため、白川町と白川町商工会は新たな地域経済活性化策として、デジタル地域通貨「しらか」の導入を決定しました。これは「地域で貯めて地域で使う」という明確な目的のもと、行政と民間の活動を連携させ、相乗効果を生み出すための画期的な取り組みです。町内限定の電子マネーとして「しらか」を導入することで、地域内での消費を促進し、持続可能なまちづくりを目指しています。さらに、ポイント付与機能を活用した行政施策との連携により、地域活性化を強力に推進していくことを目的としています。
「白川ポイントカード」からの進化と導入の背景
「しらか」導入の背景には、美濃白川カード会が平成23年度から運用してきた「白川ポイントカード」の課題がありました。62台導入されたカード機端末の経年劣化による故障多発は、加盟店の顧客サービス低下や手続き遅延、修理費増加を招き、システム更新の必要性が浮上していました。令和4年12月にはカード端末の購入かデジタル地域通貨導入かの検討が始まり、事業の発展性やランニングコストが論点となりました。そして令和5年12月、美濃白川カード会からデジタル地域通貨導入事業の要望があり、このニーズを起点に「しらか」導入プロジェクトが本格的にスタートしました。
導入決定のポイント:ランニングコストと高齢者にも優しい操作性
デジタル地域通貨導入にあたり、複数の提案の中から「しらか」が選ばれたのには明確な理由があります。最も重視されたのは、運用開始後のランニングコスト、特に月額利用料の安さでした。導入後の運用主体が美濃白川カード会であり、加盟店舗を増やす必要がある中で、月額利用料が定額かつ安価であることは、新規加盟店獲得の大きな促進力となると評価されました。
また、高齢化率が非常に高い白川町では、全町民が容易に利用できる仕組みであることが必須条件でした。65歳以上の約40%がスマートフォンを所持していない現状を踏まえ、利用者QRコードを読み込むタイプのスマホアプリ優勢の提案よりも、全町民に1枚ずつ配布される非接触ICカードと、店舗に統一して配備される専用端末の組み合わせが高く評価されました。緊急時や問い合わせに対するサポート体制も重要な選定基準となり、この点に不安が残る事業者は評価を伸ばせませんでした。
受託候補者決定とシステムへの期待
厳正な審議の結果、日本カード株式会社が受託候補者として満場一致で決定しました。日本カード株式会社の提案は、全町民への非接触ICカード配布と、IC・QRコードリーダーおよびプリンター一体型の店舗専用端末の配備、そしてICカードへの住民情報取り込みによる給付事業や対象者限定施策への対応力が評価されました。さらに同種の事業実績が群を抜いて多く、その豊富な経験も高く評価されたポイントです。地域通貨ポイントシステムのプラットフォームアプリを有し、システム利用料が定額安価である点は、加盟店舗拡大を目指す美濃白川カード会にとって大きな助けとなることが高く評価されました。一方で、地域活性化に資する拡張機能性については課題も指摘され、今後の改善が期待されています。
導入後の確かな効果:地域経済への貢献
「しらか」導入後、その効果は着実に現れています。デジタル地域通貨を通じて地域内で発生した経済効果は、現金支払、電子マネー支払、ポイント利用を合算して総額81,310,716円に達しました。これにより、地域経済に多くのお金が還流し、経済活動が活発化、地域内でお金の循環が進んでいます。
内訳を見ると、ポイント利用によるお買い物が26,023,617円、電子マネー利用によるお買い物が11,800,792円、現金でのお買い物が43,486,307円となっています。電子マネーをチャージした人は5997人、アプリ登録者数は1631人(全利用者の1/4、うち1/3以上がスタンプラリーでポイント獲得)に上り、地域での購買意欲が高まっていることがうかがえます。様々な場面で進呈された各種ポイントが地域の消費を刺激し、経済全体への波及効果が期待されています。
利用促進のための多様なイベント開催
「しらか」の普及と利用促進のため、様々なイベントも開催されました。チャージ金額にかかわらず一律3000ポイントが付与されるプレミアムチャージイベントや、全町民への5000ポイント配布、スタンプラリーイベント(500ポイント)、お買い物ポイント2倍デーなど、利用者がお得に「しらか」を使える機会を提供することで、地域経済の活性化を後押ししています。
普及に向けた地道な努力と今後の展望
「しらか」導入と普及の過程では、様々な苦労もありました。一つでも多くの加盟店を増やすための地道な働きかけ、加盟店舗への端末操作方法のレクチャー、そして地域カードをいかに普及させるかという運用方法の話し合いなど、関係者の尽力があってこそ、今日の成果に繋がっています。
今後の展望として、「しらか」のさらなる普及を目指し、地域に活力をもたらすデジタル地域通貨システムを日本カード株式会社と連携しながら取り組んでいきたいと考えております。
白川町の「しらか」は、人口減少と高齢化が進む地域社会において、デジタル技術を活用して地域経済を活性化させるモデルケースと言えるでしょう。「地域で貯めて地域で使う」仕組みを通じて、地域内の経済循環を促進し、住民の生活利便性を向上させるとともに、行政施策との連携により多角的な地域課題の解決を目指しています。白川町の挑戦は、同様の課題を抱える他の地域にとっても、大きな示唆を与える事例となるはずです。今後の「しらか」の展開にも注目が集まります。