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飲食店の開業前にやるべきこと

多くの書籍やWebサイトでも取り上げられているように飲食店を開業するにあたって準備段階でやるべきことは、以下のような流れで実施するのが一般的です。
おさらいしてみましょう。

1. コンセプトとブランディングを確立する。
2. 市場調査を行い、それに沿った開業予定の地域を探し、需要、競合他社の状況、ターゲット顧客を確認。
3. ビジネスプランの策定: 長期的な目標とそれを実現するための戦略を明確にする。
4. 資金計画: 開業資金、運転資金など、必要な資金を計画し、資金調達方法を検討。
5. 物件の選定: アクセスの良さ、ターゲット顧客の流れ、家賃などを考慮して選ぶ。
6. 導線と効率的なレイアウトを考えた店舗設計を策定。
7. メニューのアジャスト: ターゲット顧客とのメニューの噛み合わせを調整する。
8. 設備と什器の選定: 確定したメニューと店舗レイアウトをもとに魅力的な店舗デザインを目指し設備と什器を確定する。
9. スタッフの採用とトレーニング: 能力と店のコンセプトに合ったスタッフを選び、適切なトレーニングを行う。
10. マーケティングとプロモーション: 開業前と開業後の集客を目的としたマーケティング戦略を確立。
11. 開業後、落ち着いてきたら『業務の効率化』を進める。経営管理ツールやPOSシステムなどを利用して、効率的な運営を目指す。

最後に挙げた『業務の効率化』、これはいわゆる今注目されているDX化ということになります。
しかし、これからの時代、この順序で本当にいいのでしょうか?

現在の飲食店を取り巻く環境
ここで一度、今現在の飲食業界を取り巻く環境を整理したいと思います。
もっとも大きな課題として挙げられるのは、労働人口の著しい減少による人手不足です。この課題は、ほぼすべての飲食店経営者に当てはまるかと思います。
ここ最近さらに深刻になった原因は、円安による外国人労働者の減少とコロナショックによる健康志向、そして、お酒離れを起因としたもので、残念ながら飲食店で働くことさえも避けたいと考える人が増えています。
昨年の有効求人倍率を見ても、全体平均が1.28であるのに対し、「飲食物調理の職業 」の有効求人倍率は2.38倍、中でも「接客・給仕の職業」は2.48倍となっており、顕著に表れています。
人材が確保できないために新規オープンした飲食店がランチを営業できない、もしくは開業日を遅らせるといった事態は今では珍しくありません。ここまでの状況になってくると、人が足りないのではなく、『人はいない。』と考えるべきです。

これからの飲食店経営に必要なこと
このような状況の中、飲食店を運営するのに必要な考え方はどんなものでしょうか?

【確実に値上げをする前提で経営する】
現行のメニューの価格が1.5倍になってもおかしくはないと考えるべき状況です。人件費や食材費の高騰を考えれば、ここを押さえ込んでしまっては根本的にどうにもなりません。

【値上げしても納得してもらえる付加価値の提供】
かけうどん一杯350円。これ以上取ることはできないと決めつけることなく、逆の発想でかけうどん一杯600円でも納得していただける商品とサービスを提供すると考えるべきでしょう。

【省人化によるシフトチェンジ】
前述したように、「人は確保できないものとして経営スタイルを作り込む」ことが必要になってきます。そのためには必要な機材やデジタルツールを導入し、DX化を進めていくことが必要です。

しかし、なかなか実行に移せないケースや抵抗があるのは、まさにこの『DX化』と『値上げ』でもあります。
今回はそのDX化について掘り下げて考えてみようと思います。


変化していく経費配分
古くから飲食店ではFL比率という経営指標みたいなものがあります。
これはF(食材費)とL(人件費)を足した金額が売上の何パーセントを占めるかという指標です。
この法則がよく使われるようになってきたのは40年以上も前であることもあり、FL比率は55%が理想であるという夢のような提言になっています。すでに皆さんもお分かりのように食材費や人件費は年々高騰しており、60%はおろか70%もキープするのがやっとというのが現状です。
この傾向はさらに拍車がかかるでしょう。この状況を打破するためにはやはりデジタルツールを積極的に取り入れることが必要で、このデジタルツールを運用する経費をコントロールすることが必要になってくるでしょう、
つまり今後は、F(食材費)とL(人件費)の他にD(デジタルツール)を含めてFLD比率55%を狙っていくべきだと思います。
つまり徹底的にデジタルツールを用いて業務の自動化を行ない極限まで省人化を図っていくということになります。

DX化の正しい進め方
そこで冒頭でふれた「飲食店を開業する前に準備するべきこと」とその流れを今一度考えてみたいと思います。
最後にあげた『開業後、落ち着いてきたら業務の効率化を進める。』
これは従来までの開業準備でしたら問題はありません。
しかし、人手不足が深刻な現代においては、店舗設計やレイアウトを検討する際に、すでに業務の効率化は、組み込んで考えるべきポイントになります。
お店がオープンして少し落ち着いてから効率的になるようにデジタルツールの導入を検討するといった段取りでは、既に手遅れだったり、無駄な経費を支払うことになってしまいます。

つまり、開業計画をする初期の段階でDX化をすることを大前提とした設計をしっかりすることが大事になってきます。
このことを考慮すると、開業段階での準備の流れ『6.導線と効率的なレイアウトを考えた店舗設計を策定。』
この際にさらにやるべきことは以下のような事項です。

1. お店の理想的なレイアウトと店舗設計を組み立てる
2. デジタルツールの置き換えポイントを抽出
3. ツールの組み合わせとトランスフォームをシミュレーション
4. 各パターンのコスパ検証
5. DX化を踏まえた店舗設計を確立

また、注意するべき点は

・開業段階で確実にデジタルツールを導入する前提で考える
・『とりあえず、あれだけ導入しとくか。』はできるだけ避ける
・全体の計画を立てて、予算の都合で一部実施はOKだが、今、途中であることを絶対に忘れない。

最も実施しやすいものは
デジタルツールを導入するといっても、個人営業で10坪のお店に配膳ロボットを入れるのは無理な話です。この場合、圧倒的に採用しやすいオーダー・会計領域のデジタルツールを導入することが第一歩となります。
券売機やレジ周り、オーダーテイク関連のツールを選定し、貴店にあったものを導入することが先決です。
接客の業務の中で、もっとも人手が取られるのは、オーダーを取り、配膳をし、また、追加のオーダーを取って下げ膳をするといった、この一連の動作です。
これが接客業の中で大半を占めていることを考えると、そのうちの『オーダーを取る』作業がなくなることは、単純に計算しても、かなりの人件費カットとなります。また、会計業務に関しても、お客様が小銭やカードを出す時間やテーブル会計の際の往復、閉店後のレジ閉めなどを考えると膨大な人件費のカットを実現することができます。
特に小規模な店舗では、このオーダー・会計領域のデジタルツールを開業時から導入することを、念頭に置いた店舗設計が必要だと思います。

IT導入補助金を利用する
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が新たにITツールやサービスを導入する際の費用の一部を国や自治体が補助する制度です。特に、会計ソフト、顧客管理(CRM)システム、など、幅広いITツールの導入が対象になります。
補助金の申請資格、補助率、補助上限額などは、実施年度やプログラムによって異なりますが、一般的には導入コストの一部(主にソフトウェアに対しての補助金なので、導入コストの1/2前後)が補助されることが多いです。
IT導入支援事業者を選定の上、導入予定のITツールが補助対象となるか確認が必要です。また、この補助金は、IT導入支援事業者と共同で申請する必要があるため早い段階で、相談することが必要です。また、IT導入補助金の利用に際して、コンサル料として、交付された補助金の10~15%を徴収される場合が多いです。トータルの補助率を考える場合、そうしたコンサル料の徴収の有無も、確認する必要があります。

まとめ
デジタルツールの導入が大きな成果を生むパターンは、経営されている飲食店ごとに違って、本当にケースバイケースです。 しかし、DX化を失敗する理由は、ほぼ共通しています。
DX化の進め方は失敗するパターンは以下のようなものになります。

1. コンセプトとブランディングが固まっていない
お店の基本姿勢である、この部分が決まってないと判断がブレます。DX化を『そこまでやる必要があるのか?』と考える瞬間が幾度となく来ると思いますが、ブランディング、コンセプトが固まっていると早く判断できます。

2. 自由に設計できる開業段階でDX化を後回しにする。
開業後にDX化を実施するとなると、再工事が必要となり、休業しなければいけないこともあり、大きなマイナスを生んでしまいます。また、もうレイアウトを変えられないという理由でベストな選択ができず、妥協案を選定することになります。

3.『人がやるのが1番、手仕事には勝てない。』と思いながら進めてしまう。
後ろ髪をひかれながらDX化をすることが一番の弊害となります。
デジタルツールにサポートしてもらって、いい営業をしようといった前向きな姿勢で臨むことが、何より大切なのかもしれません。

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